2013.9.23 / 動物科学ニュース
都会暮らしと病気の関係
社会から隔離されて生活する事に害があるのとは逆に,都会の過密状態で生活することにも様々な問題がある
可能性が2011.6.23号のNatureで報告されました.
農村地区から都市部に至るまで様々な生活環境で暮らしているヒトを対象に行われた研究で,ストレスに対する
反応には生まれ育った環境でそれぞれ,違いが見られる事がわかりました.特に脳のストレスに対する反応は,
現在住んでいる都市の大きさと,幼少期に都市に住んでいた期間の長さに相関していました.住んでいる都市が
大きい程,都市で生活した期間が長いほど,脳の領域でのストレスに対する機能的反応が低下していたのです.
わかりやすく言うと,幼少期を都会で過ごしその後,大都市で生活しているヒトは,ストレスに弱いという事です.
この研究はヒトにおいてのものでしたが,動物病院でもなかなか治らない皮膚病や胃腸炎が田舎に引っ越しした後,
無治療で完治した例を過去に何度か経験したことがあります.原因不明の皮膚病,胃腸障害,自己免疫性疾患,悪性腫瘍な
ど,イヌ・ネコにおいても都会生活やそれに伴う慢性のストレスが様々な疾患の原因になっている可能性は否定できません.
もちろん,ヒトにおいては都会で暮らす様々なメリットも存在するので,一概に都会が良い田舎が良いと決めることは
できません.しかし,都会でペットを飼育する場合,自然が豊かな環境で健康な両親から生まれ,親兄弟と健全に育った
仔犬・子猫をブリーダーから入手し,日常の世話以外にも時々は自然の中へ連れて行き,思いっきりストレス発散させ
てあげることは,オーナーにとってもペットにとっても健康のために良い事かも知れません.