2014.6.25 /

乳がんの進行を抑える

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ヒトでは以前から心臓病の危険因子を持つ女性は乳がんになりやすい傾向があることが知られていました.
最近の研究で,その理由がコレステロールに深く関係している可能性があることが分かりました.

ヒト乳がんの大半はエストロゲンの作用で悪化することが分かっていますが,テキサス大学のPhillip Shaulらは,
ごく普通のコレステロール分解産物が腫瘍のエストロゲン受容体を活性化させる事実を知り,デューク大の
Donald MacDonellと共同で27HCと言うコレステロール産物がヒトの乳がん細胞の成長を促進することを
明らかにしまし,2013.11にReports誌とScience誌に報告しました.

調査では,乳がん患者の正常な乳腺の27HCは健康な女性の3倍もあることが分かりましたが,実際に
血中コレステロール濃度が乳がんのリスクにどう関係しているのかは分かっていません.
また,患者の乳がん組織中の27HC値と血中コレステロール値の間に一貫した関連性は見られませんでした.
しかし,コレステロールを下げる薬剤が一部の乳がんの進行を遅らせる事ができるという研究もあり,今回の
報告はこれを強く支持するものです.これはエストロゲンとは全く異なる物質が乳がんを加速している可能性
を伺わせています.

イヌやネコの乳がんは現在のところ,外科手術が唯一の治療法になっていますが,いろいろな理由で手術が
受けられない患者さんもたくさんいます.消炎鎮痛剤やサプリメント以外にも,コレステロールを下げる
薬剤を併用することが,患者のQOLの改善に役立つ可能性はあるのかもしれません.