2016.6.29 / 動物科学ニュース
免疫と腸内細菌の関係その2
がんの治療においては,外科,放射線,化学療法が長い間,標準的な治療でした.
しかし,近年では,患者の免疫力を高めることで自らの力でがん細胞を探し出し破壊する作用が高まることが分かり,
頻繁に臨床試験が行われるようになってきています.
がんの免疫療法では,その治療によく反応する患者とそうでない患者がいることが分かっています.これについては,
腫瘍や患者の遺伝的要因以外に,腸内で共生している細菌群の構成の違いが治療効果に影響を与えている可能性が示唆されています.
腸内細菌は未知のメカニズムにより患者の免疫力に影響を与えることが分かっていて,一部の細菌はがんに対して
有効な免疫応答を誘発できる可能性があります.
ビフィドバクテリウム属の2種類の菌,ビフィドバクテリウム・ロングムとビフィドバクテリウム・ブレーベに
抗腫瘍活性を高める働きがあることをシカゴ大学のアレグとガジュウスキーが確認しました.
フランスでの研究ではバクテロイデス属の菌が免疫療法との併用でマウスの腫瘍を消失させることが確認されました.
これらの菌を,以前お話しした可溶性の食物繊維と日常的に摂取することは,免疫力の増強や
アレルギーの治療だけでなく,がんの予防や治療にも効果が期待できそうです.なお,抗生物質の投与は
共生細菌を殺してしまい腸内細菌のバランスを壊すため注意が必要です.
ビフィドバクテリウム・ロングムはビフィダスヨーグルトに,ビフィドバクテリウム・ブレーベはヤクルトミルミルに
含まれているそうです.可溶性の繊維は,オートミールやサイリウム,小麦のふすまなどに多く含まれています.